市民ネットワークの渡辺忍です。 
会派を代表して、本定例会に提案されました議案第81号・平成28年度千葉市一般会計補正予算、及び議案第85号・千葉市ビジネス支援センター設置管理条例の一部改正について、賛成の立場から討論を行います。

初めに、議案第81号・平成28年度千葉市一般会計補正予算(第1号)についてです。 
本議案のうち、保育士等宿舎借り上げ事業及び保育所等業務効率化推進事業のうち、ICT化による保育士の負担軽減については、保育士不足の解消に繋がる施策として、一定の評価をいたします。船橋市が宿舎借り上げ制度を昨年12月に導入し、更に市単独での民間保育園への保育士処遇への上乗せも、4月から増額するなどの影響もあり、今年4月、千葉市では待機児童ゼロを達成できませんでした。施設規模としてはまだ乳幼児を預かれるにも関わらず、保育士不足により、定員を削減するケースが公立でも発生する事態となっています。 
保育士等宿舎借り上げ事業は5年目までの保育士に限られるとのことで、新規参入の企業にとっては保育士確保に繋がる期待があります。しかし、本来であれば住宅補助などですべての保育士に長い期間支給できるような仕組みであれば…との声が、現場からはありました。待機児童解消のため保育士が足りないから、潜在保育士や保育資格取得者にとにかく保育園に就職してもらうための施策ではあります。つまり、飴が与えられている状態ではないでしょうか。5年たったあとの保育士はどうなるのでしょうか。国が決めた緊急施策であり、今、必要な施策でもありますが、保育士の処遇改善については、今後もしっかりと検討していく必要があります。

次にICTシステムの導入ですが保育施設において、主に手作業で行っている児童台帳、保育日誌等の管理や作成業務をシステム化することにより、保育士の負担を軽減させることを目的としているとのことでした。 
園によって保育に対する考え方も違うことがありますが、私がヒアリングをさせていただいた園では、デスクに向かうなら子どもに向って欲しいとのこと。こちらの園では、保育士からは必要最低限の報告としているとのことから、導入はしないとのことでした。 
様々な保育士からの報告類が何のために必要か、それは経営側の守りの姿勢でもあると考える、デスク上手、つまりは報告書を書くのは上手でも現場が十分でない保育士もいるとのことでした。ICTシステムの効果については、今後、動向を注視させていただきたいと思います。

つぎにビデオカメラ導入についてです。 
ビデオカメラの導入が午後のお昼寝や外遊び、水遊びなどの事故の防止や万一事故があった場合の事後検証を目的としているとのことですが、

実際に私が確認した園では防犯と勘違いをしていたと、そうでないならば保育室等へはビデオは入れない、保育士に確認してから慎重に検討するといった声が聴かれました。 
導入済みが32施設、86施設から要望があるとのことですが、こちらも防犯と勘違いしての回答ではなかったか、予備調査には疑問があります。

今後保育園がどのような計画でビデオカメラ導入をおこなうつもりかは申請の際にきちんと確認していただき、目的にあった導入となるよう丁寧な説明をお願いします。

全国で昨年度は14例の死亡事故があるとのことですが、認可外保育園が10例とのこと。 
また、事故の種類としては、午後の昼寝の時間帯が14例中の10例。検証するとしたならば、どのように園内にカメラを付ける必要があるのでしょうか。もし事故の検証に利用するのであれば、全保育室や講堂など過度に設置を行う可能性はないのでしょうか。それほど過度につけるのではないにしても、やはり保育士にとっては監視されているように感じ、委縮につながることを大変懸念いたします。

また、ビデオカメラが設置された場合には保護者の目に明らかとなり、事故やトラブルが起きた際などには、保護者から閲覧を求められるなど、対応に困るケースが発生することが予想されます。今後補助金交付要領を作成し、一定のガイドラインを設ける中で、運用については検討されるとのことですので、プライバシー保護、保育士の職場環境への配慮も含め、しっかりと現場の意見も取り入れながら、適切な運用をお願いいたします。

議案質疑の際にも申し上げましたが、今回のビデオカメラ導入が期待しているような事故やけが防止・抑制の効果があるのか、疑問であります。管理者、保護者にとって本来大事なのは、保育士への信頼関係を築くための積極的なコミュニケーションであるにも関わらず、保育現場への安易なビデオカメラ導入が、管理者や保護者の保育現場への過度の監視を強め、保育士の働きづらさにつながるのではないか大変危惧します。 
私自身が保育園に子どもを4人、のべ15年間にわたって預けてきた経験からは、親として保育士の先生に感謝の言葉しかありません。もちろん、けがはありますし、お友達とのトラブルもあります。その一つ一つを丁寧にお迎え時に説明してくださる先生方とのコミュニケーションがどれほど心強かったことか、今でも忘れられない言葉があります。「お母さんたちスゴイがんばっていると思います。保育園に連れて来るだけでも大変。園にいる間は私たちがしっかりとみさせてもらうので安心して、お仕事行ってください」と 
本来、保育士と保護者の関係はこういったところから信頼関係を築くものであり、ビデオカメラがついている保育園だから、心配ない。保育士もカメラに撮られているのだから、しっかりと保育してくれる。そう考えるようになってしまうのだとしたら、本当に残念でなりません。

保護者の要望も近年は変わってきた部分もあり、けがをさせないでという方がいたり、わが子が一番という集団保育の意義を理解されていない方も残念ながら増えている状況であることは理解できます。しかし、保育の現場は本来、大人目線で、親のために行われるものではなく、子どもの安心できる生活の場として、「愛されている安心感」「おとなは自分の成長を楽しみにしてくれている」という実感のもとに育まれる大切な人格形成の場の一部ではないでしょうか。

今回、保育関連の議案を審議するにあたり、感じましたのは、国から示されたから導入する、近隣の市に保育士が流れてしまうから、あわてて同様の事業を取り入れる、そういった姿勢でいいのだろうかという点です。保育士不足を解消するためにではなく、現場で子どもと向き合って毎日生活をともにする保育士のことを大切にする施策を考えていく必要があるのではないでしょうか。

担当部局の職員の皆様は、少ない予算を活かして、日々保育園を円滑に事故なく運営していくことに尽力されていることと思います。本当にご苦労されていることは想像に難くありません。だからこそ、千葉市として、保育行政はどうあるべきか、地域の子どもたちにどんなふうに育ってもらいたいのか、さらに突き詰めて考えて欲しいのです。 

保育園・保育士は実は貧困の防波堤としても大切な社会資源だと私は考えています。 
保育園は生活の場です。だからこそ、家庭が見えると言われます。

ある保育園の園長先生の話です。子どもの持ち物に名前を書いてきてと言っても書いてこない親がいる。困った親だ、と決めつけるのではなく、親の方も名前を書いてもらうような生活をしてこなかった母親かもしれない、丁寧に名前を書く理由から説明し、その場でペンを渡して書いてもらうそうです。そういった細かなことを、困った親だと切り捨てるのではなく、困っている親なんだということで、親も含めて丸ごと支えていく姿勢で運営されているそうです。ママ―って寄ってくる子を可愛いと思えないと話すある母親は毎日の生活に追われて、まったくゆとりがなかったそうです。カラダを壊していることが見た目にも明らかだったため、生活保護の申請を進め、渋る母親を一緒に連れて申請に行ったそうです。その後しばらくして、生活が安定したら、駄々をこねる我が子を「なんだか可愛い」とぼそっと言ったそうです。 
「人と一緒に過ごす安心感を知って欲しい」「SOSを出したら助けてもらえる」そういった経験を保育園で親子とも育んで欲しいと話しているのを聞き、私は千葉市にもこんな保育園が増えるといいと感じました。 
「困ったときは保育所がある」そうやって、その後も頼られるような深い関係を築ける保育園が千葉市にたくさんあったら素敵だと思うのです。

当事者である子どもには何の落ち度も責任もありません。その親も含めて何が貧困を作り出すのか、一緒に考えていける保育所を作るのはその現場にいる保育士です。その保育士自身も貧困であることが多い現実をどう考えていくのか、真剣に考える時ではないでしょうか。いろいろと申し上げましたが、保育関連議案について、今後関係者で一丸となり、より良い保育環境につながる案件であると信じ、賛成といたします。

つぎに 
(3)ひとり親家庭高等職業訓練促進資金貸付事業について です。 
この貸付対象の前提となる高等職業訓練促進給付金の利用者は、昨年度は全員が資格を取得し、修学後もほぼ就労されていることから、この貸付事業がひとり親家庭の自立に繋がるきっかけとなることを期待しております。 
本事業は、原則貸付ではあるものの、1年以内に取得資格を活かした就職をし、5年間その職に従事した場合には貸付金の返還を免除するとのことであり、就労場所は市内に限らず、5年間のうちには、資格を活かした転職は可能、求職活動を続けていれば、返還を求めないなど、ひとり親家庭の自立促進を目的とした柔軟な事業設計であることに期待を持ちました。 
そして、特に評価をしたのは、定期的に就労の継続実態の確認を行う際には、就労の継続や生活に困難を抱えているような状況があれば、相談窓口等での支援につなげていきたい。との姿勢です。

各区の保健福祉センターにはひとり親家庭に対する就業相談員もいらっしゃるとのことですので、ぜひ、そういった寄り添う支援目線でのサポートをしていただくことをお願いします。 
今回のこの貸付事業開始により、高等職業訓練促進給付金の利用促進に繋がり、ひとり親家庭がより安定した雇用に繋がることを期待したいと思います。

次に 
2 議案第85号 千葉市ビジネス支援センター設置管理条例の一部改正について です。 
開設した当初に比べ、市内中小企業の支援拠点として機能してきた千葉市ビジネス支援センターの利用実態が大きく様変わりした状況の中、施設利用者の利便性の向上を図るとともに、創業支援事業については新たな創業形態にあった支援スキームへの転換を図るため、千葉市ビジネス支援センター設置管理条例の一部を改正するとのこと。 
本館の利用実態に合わせて3フロア揃えての利用形態とされること、また市民の創業支援としての役割を担ってきた富士見分館の事業を廃止するにあたっては、今後は、創業形態の変化に合わせ、チバラボや特定創業支援事業など、居室を持たずに法人化を目指す企業家への支援を充実させるとともに、一定程度存在する居室ニーズに対応するため、市内民間レンタルオフィス等との連携を強化し、産業振興財団のコーディネーターによる巡回支援の実施などを検討されることについて状況変化に合った改正であること評価いたします。

ただ、一つ残念なのは、今後市内民間レンタルオフィス等との連携強化としてコーディネーターの巡回支援があげられましたが、コワーキングスペース利用者や自宅サロン開設者への巡回支援は対象とはならいとのこと。

女性の働く一つの形態としてプチ起業や自宅サロン開設が増加し、ママ起業は社会的なムーブメントにもなっています。こういった自宅で料理やフラワーアレンジメントなどの様々な教室(サロン)を開く主婦、通称「サロネーゼ」は、予約待ちが出るほど人気の教室がある一方、自宅での教室開催にとどまらず活躍の場を広げるサロネーゼも増えています。

こういった女性が持つ口コミの力はとても強い、とサロネーゼの登録サイトを運営する会社の担当が、また、消費者行動論が専門の青木幸弘学習院大学教授は「主婦が趣味で仕事して、と矮小(わいしょう)化するのではなく、サロネーゼがはやる社会的背景を探れば関連するビジネスチャンスも見えるはず」と指摘しています。社会的にまだまだ専業主婦の範囲内で、趣味程度にと考えている女性も多いのが実態です。しかし、一歩を踏み出した後、飛躍的に活躍する女性起業家もこれからはターゲットして支援をしていく必要があるのではないかと考えます。 
ここで一つ今後の働き方の選択として、私の知人の将来設計をご紹介します。現在は看護師として一家の家計を担う働き方をされており、パートナーが主夫という状況です。彼女は将来、親を自宅で介護したいということで、今から自宅で収入を得るためにアロママッサージの資格取得をされました。生業として、家族を家で介護しながら収入も確保していく必要があるから、アロマの自宅サロンを開くのだそうです。こういった未来を見据えて、起業をされる人を積極的に支援する仕組みを望みます。 
ぜひ支援の対象として、自宅サロン開設も視野に入れ、まずは、市内の自宅サロン起業実態を調査するなど、女性活躍支援の第一歩となる経済施策をお願いしたいと思います。 
以上で市民ネットワークの討論を終わります。