会派を代表し、平成26年度決算議案を認定する立場から討論を行います。

決算審査にあたっては、財政健全化および行政改革推進の観点から、第2期千葉市財政健全化プランの進捗状況はどうか、その評価はどうか、それぞれの事業への取り組みはどうか、人権への配慮はされているかどうか、市民参加と情報公開が図られているかどうかを基準としながら判断させていただき、まだ改善すべき点はあるものの、着実に財政健全化に向かっているとして、認定することといたしました。

平成26年度の決算に関してですが、財政健全化プランにおいては、市税等自主財源による歳入の確保や事務事業見直しによる歳出の削減を図ることとしていました。26年度の一般会計歳入決算額のうち、自主財源は、2,373億4,500万円で、前年度と比較して、81億2,800万円、3.5%の増となりました。このうち市税の増額分は28億7,500万円となり、全体としては1,750億円となっています。

市民税については、個人市民税が、防災・減災事業の財源確保のために行った均等割額の引上げ等により、前年度比約1億円増の642億円、法人市民税が、企業収益の改善により、前年度比約12億円増の194億円となり、市民税全体としては836億円となりました。また、固定資産税については、家屋の新増築等により、前年度比約14億円増の658億円となりました。市税については、市民税、固定資産税とも増収となり、自主財源を確実に確保されており、財政健全化の取り組みの着実な一歩となっています。

さらなる歳入の確保に向けては自主財源の徴収率を上げる取り組みが必要ですが、財政健全化プランにおいて、徴収率の目標を設定している6債権のうち、市税、国民健康保険料、介護保険料、保育料、住宅使用料、下水道使用料について、市税は目安を0.9ポイント上回る95.7%、国民健康保険料は1.8ポイント上回る75.9%、保育料は0.1ポイント上回る95.0%、下水道使用料は0.1ポイント上回る94.8%で、の4債権については平成26年度目安の徴収率を達成されています。しかし一方で、介護保険料は目安を0.2ポイント下回る96.0%、住宅使用料は2.5ポイント下回る80.8%であり、平成26年度目安の徴収率におよびませんでした。初期滞納者に対する働きかけや過去の滞納分について、進行管理をするなどして徴収率を上げるよう取り組まれたとのことですが、負担の公平性の観点から、今後も取り組みを継続いただけるようお願いします。

また、市の財政運営に影響の大きい主要債務総額の削減についてですが、財政健全化プランによると、平成29年度までに24年度と比較して1,000億円程度削減するとの目標に対し、26年度末において495億円削減できており、着実に債務の削減が図られています。国民健康保険については、アクションプランに基づき、累積赤字額を31億円削減し、総額85億円となりました。保険料の徴収対策などのご努力があったとのことを評価します。

ただし、状況はまだ厳しく、今後も扶助費の増加など厳しい財政運営が続くことから、引き続き、目標を達成できるよう歳入の確保と歳出の削減に向けて着実な取り組みをされつつ、税の徴収や執行停止にあたっては、市民の生活や健康状態、就労状況など人権に配慮いただき、必要な場合はすみやかに関係部局との連携を図り、きめ細やかな対応をお願いいたします。

以下、何点か評価や意見、要望を申し上げます。 
また、26年度から財政局で作成された大変わかりやすい資料「みんなの財政」ですが、市民からの問い合わせはまだ1件もないとのことで、活用がすすんでおらず大変残念に思います。市民に身近な事業について、税金がどの程度活用されているか知らせる「税金のつかいみち」と題したコラムもよくまとまっています。市の財政状況を市民に広く知らせ、財政健全化についての取り組みを理解していただくためにも、ホームページへの掲載、公共施設への配架設置に加え、これが活用されるような媒体や広報を工夫していただきたいと思います。

次に、危機管理についてです。東日本大震災から4年半が経過しましたが、災害時においても市役所の機能を維持するため、危機管理センター整備に向けた基本構想や業務継続計画が策定されるなど、防災・減災のための取組みが着実に進められていることについて評価いたします。9月6日夜に中央区蘇我地区で発生した突風は狭い範囲でありながら、大きな被害をもたらしました。このときは「大雨・雷・洪水注意報」の発表だったため、災害「警戒本部」は設けられたものの、「対策本部」に切り替えられることはなかったとのことでした。対策本部が設置される時の配備基準は、理解できますが、今後も同様の災害や被害が起こりうることを想定し、市民の目線にたった避難勧告や指示、災害への対応について考えていただきたいと思います。特に情報をどう伝達するかは重要です。その多様化と拡充化を行い、また事前周知の方法にも工夫をし、市民の安全・安心が確保されることを要望します。 
また、防災対策についてですが、災害後に活動をおこなう避難所運営委員会は年を経るごとに設立数が増え、平成27年3月末までに194か所、そして、8月末の時点で206か所となっています。委員の総数は2,660人、このうち女性委員の割合は668人と全体の、約25%となっています。また、自主防災組織の育成強化を図るために、防災リーダーを養成すべく「防災リーダー研修会」や「防災ライセンス講座」を実施されましたが、防災ライセンス講座には262人中36人と女性参加は1割強との女性が参加との報告がありました。防災ライセンス講座については、地域防災に男女共同参画の視点を取り入れて企画・開催された点について男女共同参画センターでの開催も企画され、女性への積極的な働きかけがされていると評価いたします。 
しかしながら、避難所運営委員会も、防災リーダーも女性が団体の中核メンバーとして活動するのでなければ、女性の視点は十分に活かすことができません。町内自治会や自主防災組織の運営がどのような体制で行われているのか、女性の役員が入っているのか、といった観点からの働きかけも同時にしていただけるよう要望いたします。

次に、「自転車」への取り組みについてです。平成26年度は幕張新都心でコミュニティサイクル「マックル」の社会実験がおこなわれたり、「自転車によるまちづくり」のテーマで市民シンクタンクが活動したりと自転車に関する事業に積極的に取り組んでおられましただこと、評価いたします。マックルについては、回遊性を高めるために公共のサイクルポートを商業施設や幕張メッセ、QVCマリンフィールドなど7か所に設置されたとのことでしたが、実際にはサイクルポートに帰ってこなかった自転車も多く、課題が残されました。 
また、本事業については市が直接事業に関与するのではなく、観光協会が「自主運営」しているとのご見解がありました。このことは、「観光協会が広告を目標額まで集めることができなかったから上手くいかなかった」との結論になる可能性を示唆しています。同様のことは市民シンクタンク事業についても言えるのですが、公募市民が研究員となって、それぞれの知見や経験を元に研究し、政策提言するとのことですが、方向性については「研究員が目指す方向」となっており、ともすれば「研究員の力量が足りなかったから上手くいかなかった」との言い訳にもなる可能性があります。 
市の施策として行う事業について、「自主運営」とはいえ、今後の方向性についてのマネジメントがなければ、「なげっぱなし」との印象は否めません。市が基本方針や構想を決め、その運用を外郭団体や市民シンクタンクに投げかけるといった手法を取り入れるべきであると考えます。また、それが「おしつけ」になる危険があるのなら、市と団体とが「共に研究し、する」「共に考える」「共に運営する」ことに取り組んでいただけるよう要望します。

次に、生活困窮者学習支援についてです。 
親から子への貧困の連鎖を防ぐため、高校進学に必要な基礎学力の向上や進路に関する様々な相談に応じ、高校進学の支援を行う学習支援事業では、生活保護世帯への学習支援に加え、26年度からは生活困窮者へ対象を広げました。現在6区すべての保健福祉センターで週2回、1回2時間で行われており、参加者からは学校でわからないことがわかるようになった、無事高校入学を果たしたと効果もあることから、評価するものです。さらに通いやすい場所の拡充を求める意見、また高校生になってから学習についていけず辞めてしまうケースもあり、今後対応が必要と考えます。生活保護世帯の子どもたちの高校中退率は5.3%、また一般家庭での大学進学率は6割なのに対し、生活保護世帯の子どもの大学進学率は3割程度という実態があります。家庭での学習が難しい子ども達の学習の場として、対象者を高校生まで広げ、拡充することを要望いたします。 
また、この学習支援に生活困窮者として参加できるのは、生活自立・仕事相談センターに相談に来た困窮世帯の子どもたちが対象となっていることから、生活自立・仕事相談センター自体の認知度を上げるために、生活保護受給窓口、民生委員、学校現場への本センターの具体的業務内容の周知をし、適切な支援が必要な子どもたちに届くよう、要望いたします。

次に、乳幼児健診未受診者家庭訪問についてです。 
保護を必要とする子ども、支援を必要とする母親に繋がる可能性の高い健診未受診者家庭訪問は大変重要な施策と考えており、評価するものです。未受診者には必ず連絡をとり、連絡がつかない場合には、訪問をしているとのこと。訪問で会えない場合には、保健福祉センター内の関係課と連携を図り、子どもの情報収集を図っていくとのことです。支援の必要な家庭を見落とすことなく、どんな家庭に生まれても、子どもが健全に育つことのできる体制強化のために、さらなる拡充を要望いたします。

次に、がん集団検診時の子どもの見守りについてです。 
平成26年度は保健所での集団健診の際に、会場内での子どもの見守りを行ったこと、小さな子どもを持つ女性が健診に行く機会の拡充につながったこととして、評価をいたします。子育て世代の女性が癌にかかると一家の一大事です。しかし、なかなかこの世代の受診率が上がらない理由の一つが子どもの預け先を検討してからでないと受診ができなかったからです。子どもの見守りを始めたことで、平成26年度は受診率が子宮がん検診でポイント増、乳がん検診で1.3ポイント増となったそうです。 
本年度はさらに各区保健福祉センターでの集団検診に対しても見守りを行っているとのことですが、現在は健診業務の委託先に見守り業務を合わせて委託する形で実現しているそうです。保育要員を確保するためには費用が掛かります。今後、公民館での集団検診などで見守りを拡充する際には、業者への委託で費用を計上するのではなく、地域の子育て支援サークルに声を掛けるなど、部署を超えて対応することで実現可能な方法を検討ください。費用がかかるから拡充ができないのではなく、さらに一歩踏み込んで、現在ある地域の人的資源を活用することで、子育て世代の受診率向上だけでなく、公民館における地域連携の仕組み作りになることも期待いたします。

次に、子育て支援についてです。 
仕事と家庭の両立支援について重要な保育の充足として、26年度に引き続き27年度も待機児童ゼロを実現したこと、この背景として、子育て支援コンシェルジュの配置増による効果が大きいものと考え評価いたします。量的拡充を進める中で慢性的な保育士不足が問題となっております。待機児童解消のために、定員以上の児童を受け入れざるをえないという理由で、非常勤保育士の増員で対応しており、正規保育士と非常勤保育士との処遇の差が改善されない現状もあります。保育の質の向上として、保育士の処遇改善の施策についても力を入れるようお願いします。

DV防止対策について 
26年度に作成したデートDV予防啓発リーフレットの作成について、内容が大変充実しており、男女共同参画センターが市立高校の2校において全校生徒を対象に「若者のためのDV予防講座」を実施するなど若い世代への啓発の取組みを評価します。また、中学生に対しては、学校現場で広く使えるデートDV予防プログラムを作成したとのことですが、教育委員会とも協力の上、しっかりと活用して意識向上を努めるようお願いします。

次に男性の子育て支援についてです。 
イクメンハンドブックを以前より作成し、千葉市独自の施策として注目している支援策ですが、26年度は子育てだけに注目するのではなく、ワークライフバランスの推進のために新たに協働事業提案制度により実施した「プレパパママ講座」「イクメン応援イベント」「パパスクール」について、評価いたします。イクメンハンドブックが千葉市独自の施策として注目を浴びるものの、ツールだけ用意をしても意識の浸透にはなかなか繋がりません。よくできたツールであっても、配布されただけで、そのツール自体が活用される場面が無ければ、市民の意識の変化や、関心が広まることはありません。今回の講座をきっかけに真のイクメンが千葉市に増えることを期待します。 
また、中小企業における男性の育児休業取得を促進するための「男性の育児休業取得促進奨励金」の創設について評価いたします。理念は素晴らしく、是非、男性育児休暇取得が進むことを望みます。しかし、現状実績がないとのことで、それには理由があるはずです。現在10日間連続の休暇取得が条件となっていることがハードルになっているのであれば、条件を短く変更するなど、本制度利用促進のための対策がどれだけなされているのか疑問です。全庁的に本制度について情報を共有し、男性の育児休暇取得推進が千葉市で進みますよう対策を要望します。

次に子どもの健全育成のうち子どもルームの拡充についてです。 
子ども子育て支援新制度の施行にあわせ、26年度には新たに高学年ルームを25か所整備したことについて、学校施設を所管が違う事業である子どもルーム整備に解放したことについては評価するものです。ただし、設置内容については、前定例会でも一般質問で取り上げましたが、問題を多く抱えています。今後は子どもルーム拡充を単独に進めるのではなく、放課後子ども教室の充実を軸に、高学年児童の居場所について、さらに検討が必要と考えます。学校施設を活用した、学習支援の提供、地域との交流の場、学校教育以外の様々な体験をする場として、積極的な取り組みを教育委員会が中心となって行うことを強く望みます。

次に、千葉中央港地区まちづくりについてです。 
平成27年度に千葉中央港地区に完成予定の旅客船桟橋整備など、ハード面にお金をかけることも必要ですが、それに見合った集客に力を入れていただきたいところです。今後、港を中心とした街の賑わいを創出するためには、ソフト面を充実させ、戦略的に人を呼び込む施策が不可欠と考えます。26年度は「工場夜景観賞クルーズ」「千葉―浦安間サイクルシップ」「海賊船ハロウィンクルーズ」等の、千葉港海上交通運航実験を行い、ソフト面の新たな取り組みを行ったことは評価できる点です。 
参加者のアンケートによると6割から7割方の参加者が「満足」と回答したとのこと。意見としては「係員の対応がよかった」など、プラスの評価があるものの、「時期が悪い」「料金が高い」「乗り場が遠い」などの改善すべき点も指摘されています。 
今後も市民意見の聴取や市民参画ができる仕組みをつくり、千葉港地区で行うイベント等ソフト事業の企画を工夫して、市内外から人が集まる千葉港を目指し、街の賑わいづくりを進めるよう要望するものです。

次に、海辺のグランドデザインについてです。 
稲毛・幕張海浜エリア活性化方策策定として、26年度は「海辺のグランドデザイン」の素案が策定されましたが行われています。これは市が考える海辺エリアの将来像とその実現に向けた取り組みの方向性を示すものです。 
25年度に実施した千葉大学と千葉市の共同研究では、25年11月から26年1月まで3回にわたり市民参加のワークショップも行いながら、26年3月には素案策定の基礎となる調査研究結果が報告されました。その基礎調査をもとに、26年度の「海辺のグランドデザイン及び稲毛海浜公園見直し計画策定業務」が、公募による事業者によって行われたわけですが、その後、今年5月14日に、日本サッカー協会(以下JFA)が、代表選手強化の拠点や、指導者・審判の養成、研修設備、また来日した外国チームの練習場となる「JFAナショナルフットボールセンター」の候補地を、千葉県立幕張海浜公園に決定しました。 
本日10月1日から31日まで市民意見募集がおこなわれる「海辺のグランドデザイン」素案には、このJFAナショナルフットボールセンターが盛り込まれておりますが、今後千葉市が考えたグランドデザインを実現していくために、県やJFAとどのように交渉を行っていくのかが問われています。 
また、整備基本計画や実施計画とは違い、あくまでも市の考えている方向性を示していくという位置づけのグランドデザインであることから、せっかく策定したものが「絵に描いた餅」になってしまう可能性もあります。 
20~30年先を見据えた海辺の将来像にむけ、官民連携を基本としてハード・ソフトの両面から活性化に取り組むとのことですのでが、飲食店等商業施設の誘致や、交通手段や駐車場の確保、周辺の見どころのPRなど、まちづくり、商業、交通、観光に関係する部局との横断的連携のもと、市民の力も生かしながら実現に向け力を入れていくことを期待しています。

最後に次年度予算編成に向けては、厳しい財政状況の中だからこそ、しっかりと市民へ情報提供し、市民の意見を反映させていただきたいと思います。私たち会派をはじめ、様々な団体からの要望が出され、その反映に務められることと思いますが、予算編成の過程での市民意見の聴取など、しっかりと耳を傾けていただくことを求め、市民ネットワークの賛成討論といたします。